古閑美保コラム「女子プロの引退」

こんにちは、古閑美保です。私のゴルフに対する考えやゴルフ界に言いたいこと、女性ゴルファー向けの話など、歯に衣着せず、感じたことをお伝えしていきたいと思います。今回は「女子プロの引退」について。女子プロは、30歳前後を境に引退やツアーの一戦を退く選手が多いです。私はプロ生活11年、29歳で引退し、一切の競技から身を引きました。

実は30歳で辞める考えを持っていました

新年早々、2015年から日本女子ツアーに参戦していた韓国出身のペ・ヒギョンが現役引退を発表しました。また、昨年10月には日本ツアー通算6勝のキム・ハヌルも引退しています。他にもこのオフに数名の韓国選手が引退したと聞きます。ふと、私の考え方は海外の女子選手っぽいのかなと思いました。ヒギョンは29歳、ハヌルは33歳。私と同じように、もともと長くツアーで戦おうと考えていなかったように感じます。

私は29歳になった2011年に現役を退きましたが、もともと30歳ぐらいで引退というのは、頭の中にあったのです。プロになりたての頃、師匠の清元(登子)先生に「あんたは、不動(裕理)や大山(志保)みたいに(何勝もするプロに)なれないから、2、3勝できれば十分でしょ。2、3勝させるから30歳ぐらいでお見合いして結婚しなさい」と、ずっと言われていました。20歳ぐらいの私は、よく理解していませんでしたが、先生の言葉もあり頭の中に“30歳がメド”というのがずっとありました。

そして、“30歳”が近づいてきた頃、ケガをしてあまり練習ができなくなり、清元先生が病気で倒れました。先生にはずっと面倒見てもらっていましたし、一緒にやってきたので本当に心が折れて気力もなくなっていました。いろいろなことをつなぎ合わせると、辞める時期なのかなと、引退の決意を固めました。そして2011年シーズンは、開幕前から最後の1年と決めていたのです。

最後と決めた2011年は私の集大成の年ですから、本当に追い込んでトレーニングや練習をやりましたね。本当に苦しいトレーニングでしたが、最後の1年と決めたからこそできたと思います。試合数を絞りながらも1年間戦い、賞金ランキング47位で締めくくりました。シード権こそ獲得はしましたが、優勝はできませんでした。思うようなゴルフもできませんでしたが、やり切った1年と自分の中では思っています。

当時は周りの方から「いさぎいいよね」とかいわれましたが、プロになった当時から辞めることは頭の隅にあったのでスパッと辞められましたよね。急に辞めることを考え始めたら「シードを獲ったからまた来年も」ってなっていたかも知れませんし、とことんやれなかったと思います。

チャレンジし続ける選手はすごい!

私みたいな考え方の選手は、日本では少ないかも知れません。30歳前後のベテラン選手がシード権を落としても、QTでうまいこといかなくても辞めるという選択をする選手は多くないと思います。ツアーは20歳前後の選手が増えている中で、今回のファイナルQTでトップ通過した下川(めぐみ)は私の1つ年下です。ずっとやり続けてチャレンジし続けられるのはすごいと思うんです。

下川めぐみプロ

チャレンジできる気持ちも分かります。レギュラーツアーという場所は、やっぱり華やかな場所です。一回注目を浴びちゃうとその興奮とか気持ちよさを忘れられないモノなんです。私も今でも優勝した時の感覚は忘れられませんからね。だから、多くの選手はチャレンジし続けているのだと思います。

私はツアーで戦うなら優勝しか狙いません。シード権を取って満足ということにはならないのです。優勝の仕方を知っているので、何をする必要があるのかも分かっています。私は極端なのかも知れませんが、優勝するための努力や体力に自信がないので、チャレンジしませんということです。

韓国出身の選手の中にも(李)チヒや(全)ミジョンといったベテランでも、まだまだ第一線で活躍しています。また、私の姉弟子である大山(志保)さんは、今でも現役のシード選手です。昨シーズンはメジャーで優勝争いしていましたからね。何度もいいますが、チャレンジし続けられることってすごいと思うんですよね。私の考えがある一方で、アスリートとして長くやることは一つの勲章だと思います。

大山志保プロと古閑プロ(2018年)

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こが・みほ/1982年7月30日生まれ、熊本県出身。身長167センチ、2001年プロ転向。03年にヨネックスレディスでツアー初優勝を遂げるなど、年間2勝を挙げて賞金ランキング3位。08年には年間4勝を挙げて、賞金女王戴冠。29歳になった11年、シード権保持していたがツアー引退。ツアー通算12勝。21年からGMOインターネットグループのアンバサダーに就任

取材・文/小高拓

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