佐伯三貴が見た【日本女子プロゴルフ選手権】

9月に入り、女子ツアーがますます盛り上がってきました。日本女子プロゴルフ選手権を4打差圧勝で制し、シーズン8勝目を挙げた稲見萌寧さんが、小祝さくらさんを賞金ランキングで逆転しました。2021年になってからは、ずっと熾烈なデッドヒートを演じてきた稲見さんと小祝さんの互いに一歩も譲らない戦いは、毎週見ていて本当に楽しいですね。2人だけでなく、古江彩佳さんも含めた賞金女王争いは、最後までどうなるかわからないと思っています。

写真/Getty Images

今回は、3人の強さについてすこし詳しくお話してみましょう。東京オリンピック銀メダリストでもある稲見さんは、全く変わらないルーティーンを見てもわかるように、本当に自分のプレーがブレることはありません。オリンピックで最後まで、世界No.1のネリー・コルダに食い下がった時にも、自分の調子が悪くて逆転される時でさえ、ブレませんでした。

一方の小祝さんは、常に沈着冷静。柔らかな表情ですが、ポーカーフェースでやはり自分のプレーを徹底して続けています。稲見さんがどんなに勝ち星を重ねても、自分は自分、と言うスタンスは不動のように見えます。

この2人を追いかける立場にいる古江さんの魅力は、キレのあるショットにあります。ショットメーカーとしての実力が十分に発揮された時の強さは、他の2人に匹敵する者があるでしょう。3人の中では一番年下(といっても小祝さん、稲見さん、古江さんの順で1学年ずつしか違わないのですが)の古江さんはまだフル参戦2戦目ですが、秋に強いイメージがあります。2019年の富士通レディスでアマチュアのまま優勝してプロに転向したことを考えれば、このまま静かにしているとも思えません。

稲見さんが優勝した日本女子プロゴルフ選手権は、ツアーのフラッグシップトーナメントの名に恥じない激戦でした。最終日、最終組は22歳の稲見さん、44歳の大山志保さん、19歳の西郷真央さんの3人が、それぞれ素晴らしいプレーを見せてくれました。

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40代、20代、10代が同じフィールドで戦うことができるのは、ライフタイムスポーツであるゴルフの魅力をそのまま示していたと思います。初優勝のかかったメジャータイトルに向けて単独首位で最終日を迎えた西郷さん、今季絶好調の稲見さん、そしてツアー通算18勝で2006年賞金女王の大山さん。それぞれが違う思いで、優勝という同じ目標に向かって戦う姿は、ゴルフの奥深さを見せてくれました。

特に大山さんは、様々な故障を乗り越えて、それでもまだ優勝への思い、ゴルフへの気持ちを持ち続け、ツアーで戦っています。今回、改めてそのプレーを見ましたが、ショット、パットともに、十分にツアーで優勝できることを証明していたと思います。大山さんの活躍は、ベテラン選手はもちろんのこと、若手にも大いに刺激になっていることでしょう。

最近、私たち世代(30代半ばと思ってください)がいろいろ議論をしたのですが、結論は「大山さんまで行ったらスゴイ」というものでした。毎年、実力のある若手が入って来てシード選手の平均年齢がどんどん下がっているツアーの中で、35歳くらいがプレーを続けるかどうかの分岐点かもしれないというような話をしていました。でも、大山さんは別格。そんな風にみんなが思ったのです。体力を維持し、試合へのモチベーションを保ち続ける大山さんは、本当にすごいと思います。

今回、西郷さんは残念ながら優勝できませんでしたが、最後まで堂々としたプレーを続けていたのが印象的でした。他にもまだ優勝には手が届かないけれど、力のある選手も何人もいます。この先の可能性を秘めたそう言った若手の優勝や、ベテランの復活優勝など、まだまだ話題は尽きないことでしょう。

実は、私も23日からのミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンに参戦します。利府ゴルフ倶楽部は、私が大学(東北福祉大)時代を過ごした第二のふるさと、宮城県にあります。5月のフジサンケイレディスに続いて今年2回目の試合に向けて、準備を続けてきました。失うものは何もなく、試合では刺激をたっぷりもらってくるつもりでいます。

母校ゴルフ部の女子チームは、現在、私たちのできなかった4冠に向けて最後の戦いを続けています。特任コーチとして、月に4~5日は仙台に行ったりしながら指導を続けている私にも力が入ります。自分たちができなかった夢を、後輩たちがかなえてくれる日を楽しみにしながら、自分も彼女たちの刺激になれるように頑張りたいと思っています。

後輩たちのうち3人は、個人としても日本女子オープンに出場することが決まっています。こちらも楽しみですね。

取材・文/小川淳子 写真/Getty Images

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