佐伯三貴が見た【東京五輪】

残暑お見舞い申し上げます。佐伯三貴です。残暑? というくらい暑い日が続きますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。

暑い暑い霞ヶ関カンツリー倶楽部を舞台にした東京五輪が終わりました。

私の“自慢の後輩”松山英樹くんは、残念ながらプレーオフで負けてしまい、あと一歩のところで銅メダルに手が届きませんでした。でも、本当によく頑張ったと思いますよ。新型コロナウイルス陽性で全英オープンを欠場して、コロナの症状と戦って克服した後でのオリンピック。トレーニングも練習も満足いくようにはできなかった中「メダルも行けるんじゃないか」というところまで楽しませてくれたのはさすがですね。72ホール目のバーディーパットが悔やまれますが、この悔しさをバネに今後も確実にツアーで頑張って行ってくれるはずです。 

松山英樹プロ/Getty Images

男子の2日後に始まった女子は、本当に暑そうでしたね。銀メダルを取った稲見萌寧さんは本当に素晴らしかったです。男子が始まる前に霞ヶ関カンツリー倶楽部で練習ラウンドをして、開会式にも出席。すぐに兵庫に移動して翌日からの楽天スーパーレディースに出場するというハードスケジュールでした。疲労は半端ではなかったと思いますが、それでも、楽天最終日にいいゴルフができて、いい感じでオリンピックに入れたのでしょう。第1組の最初のプレーヤーとして、大会をスタートさせる役目もこなしました。

稲見萌寧プロ/Getty Images

最終日のプレーは見事の一言。米ツアーの延長線上のようなオリンピックは、畑岡奈紗さんにとっては、いつも顔を合わせているメンバーだったでしょう。結果は皆様ご存じの通り、金メダルが今年絶好調のネリー・コルダ選手、銅メダルがコ選手と、稲見さん以外の2人は米ツアーでの実績も十分。メジャータイトルを持っている2人を相手に、最終ホールまで金メダルが期待できるゴルフをしたのは、本当に素晴らしかったと思います。

この週は日本の女子ツアーで唯一、今年度試合がなかったこともあり、かなりのプロがテレビ観戦をしていたようです。アマチュアゴルファーの方はもちろんですが、普段ゴルフを見ない方、プレーしない方も、これを機会にゴルフに興味を持ってくれるといいな、と思っています

参加選手が60人と、通常の試合の半分以下で行われた東京五輪でしたが、それでも、試合が行われている時間は7時間以上。他の競技に比べると長い時間がかかるゴルフですが、何も全部を見ていなくてもいいのです。「ゴルフは上がり3ホール」という言葉もあるように、上がり数ホールを見れば、色々なことがわかります。

例えば、今回の稲見さんは、最終日の17番バーディーで首位のコルダに追いつき、金メダルの可能性を見せました。残念ながら18番のセカンドショットをバンカーに入れてボギーとしましたが、この18番を見ているだけでも面白かったはずです。最終組の3人がメダルの色をかけて戦っていたのですから。

稲見萌寧プロ/Getty Images

ツアーに出場しているプロたちは、日頃、自分のプレーに忙しいですが、それでも、テレビで試合を見ることはあります。

私は、自分が試合に出ている頃には男子の試合ばかり見ていました。ゴルフは、100人以上の選手が戦い、優勝できるのはたった1人だけ。だから優勝しなければそれは「負けた試合」になります。負けた試合なんて見たくないので男子の試合を見ていた、というわけです。

ツアーを離れた今では、女子の試合も見るようになりましたが(笑)。男子の試合を現場に見に行くことも、1年に1回くらいはありましたね。大学の後輩が出場していたり、色々、勉強にもなりますから。

話を五輪に戻します。日本の女子ツアーは、毎週、試合があるので、その中に東京五輪があるようなスケジュールでしたが、試合が限られている男子にとっては、より大きな意味があったオリンピックだったと思います。そこに出場することで松山くんも、星野陸也くんも、大きな成長につながったのではないでしょうか。

取材・文/小川淳子 写真/Getty Images

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