佐伯三貴のツアー裏話【賞金、経費、気になる副賞のゆくえ】

Regina-web読者のみなさん、こんにちは。佐伯三貴です。コラム連載3回目の今日は、ファンのみなさんがあまりご存じないツアーの裏側をあれこれお話ししたいと思います。プロたちの人間的な一面を知ってもらえるかもしれません。

佐伯三貴プロ/Getty Images

ツアープロの収入と経費

ツアープロの収入の根本は賞金です。賞金をたくさん稼ぐ選手は露出度が高いから、スポンサーもたくさんつく、と言う仕組みです。チームスポーツのように年棒が決まっているわけではなく、自分がどれだけ結果を出せるか、がそのまま獲得賞金に跳ね返ってきます。と、ここまでは何となく皆さん理解してくださっていると思います。

では、賞金は、どうやって支払われるのでしょうか?現在は、試合が終わった翌週の水曜日、木曜日くらいに日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)より源泉徴収されて振り込まれます。

女子ツアーの賞金もどんどん大きくなって、今年一番賞金の高いアース・モンダミンカップなどは優勝すると5400万円が一気に入るというわけです。と言うとものすごく稼げる仕事のように聞こえますね。まぁ、成績がよければ、どんどん稼げるのは事実です。ですが、経費もものすごくかかります。3月の開幕戦より11月末までの9か月間、日本中を自家用車や飛行機、鉄道、レンタカーなどで移動し、週に5泊以上ホテルに泊まるのですから。

私の場合は、マネージャー、コーチ、トレーナー、キャディーなどの大所帯で動いていました。結果を出すための先行投資だと思って経費を使っていたので、年間大体3000万円くらいかかっていたでしょうか。まぁ、これは多いほうですが、どんなにやりくり上手な選手でも全部の試合に出れば年間最低1000万円近くはかかります。

一部の選手はスポンサー企業に経費を出してもらえるスポンサー契約を結んでいる場合もありますが、基本的に選手個人の必要経費となり全額持ち出しになります。

キャディーとの関係は?

キャディーとの関係も、みなさんにはわかりにくいかもしれませんね。ツアーでは、大きく分けて帯同キャディーとハウスキャディーの2種類がいます。前者は、ツアーキャディー(プロキャディー)や家族、知人など自分でキャディーを手配する場合。後者はゴルフコースに勤務しているキャディーさんや学生アルバイトなど、大会側が用意してくれるキャディーさんです。後者については、大会側での決まりで成績によってキャディーフィーを支払います。また優勝した場合は一緒に戦ってくれたキャディーさんに御礼を渡すのが一般的です。

帯同キャディーの中でもプロとして稼いでいるツアーキャディーの割合は、年々女子ツアーでも増えてきています。理由としては、シーズン中は毎週、試合がある女子ツアーは、腕のいいプロキャディーにとっては安定して稼げる“職場”だからというのがひとつ。次に4日間大会も増えたとはいえ、まだまだ3日間大会もあって肉体的に男子より楽、というのがあります。最近では若いプロキャディーも増えてきて頑張っています。

プロキャディーと選手は個人契約なので、シーズンを通した長期契約のこともあれば、1回限りだったり、短期間を繰り返す場合もあります。長期契約でも成績が出なかったり、関係がうまくいかなくなればコンビを解消することもあります。キャディーフィもお互いの合意なのでそれぞれですが、基本給があって、後は賞金の何パーセント、というのがほとんどです。

家族やマネージャーがキャディーも兼ねたり、キャディーが運転手やコーチも兼ねたりなどと何役もこなす場合もありますが、私はキャディーさんにはゴルフ場内だけで仕事をしてもらっていました。

現役最後のほうは、大学の1つ上の先輩に年間契約でお願いしていたのですが、試合を戦う上で必要なこと(スイングや状態など)を自分が忘れていたら指摘するように言っていました。ケンカもしたけど、コースマネジメントなども意見があって仲よくできていました。

優勝副賞ってどうしているの?

ファンのみなさんに意外に尋ねられることが多いのが、優勝副賞についてです。賞金以外にスポンサー関連の者がいただけるのですが、うれしいものですよ。試合会場に飾ってある車や、スポンサー商品1年分などは比較的一般的です。私の場合、副賞で頂いた車は必ず乗りました。

大会スポンサーの商品1年分は、ケースバイケースですが1度に届くことが多いようです。お茶が1年分とかチョコレートが1年分など「こ、こんなに!?」と言うくらい送って頂けます。レジャーボートやユンボ(パワーショベル)などもありますね。父が船舶免許を持っているので船は欲しかったのですが、その試合では勝てなくて残念でした。ユンボは、お世話になったゴルフ場さんに寄付する人が多いようです。自分で使う方もいましたが。

あ!珍しいところでは牛1頭、と言うのもありましたね。肉牛なので通常は精肉して頂くのですが、そのままもらって飼った先輩もいました。ツアーの表彰式では、副賞も手渡されるので、次からは気をつけて見ていていただくとなかなか面白いですよ。

今回のプロの経費の話、キャディーの話などのようなプチ情報は、これからも折を見てお届けしていくつもりです。

取材・文/小川淳子 写真/Getty Images

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