ゴルフクラブの「番手」にまつわる、ちょっと変わったお話【トーナメント裏話】

とある大会を終えた日曜日の夜のこと。そのまま次の会場へ移動するため、当時ツアープロキャディであった筆者はホテルに宿泊していました。経費を節約するために、先輩プロキャディと同室だったのですが…。

もうそろそろ布団に入ろうかという頃、先に寝ていたはずの先輩が突然「明日考えよう」と言い出しました。布団に横になったままそう言った先輩に、私は訳もわからず「何を?」と問いかけました。すると、先輩はこう言いました。

「クラブの番手」。

あとでわかったことですが、それは寝言だったのでした。キャディが寝言で唱えてしまうほどに、大事であり悩ましいクラブの番手選び。今日はそんな番手とキャディにまつわる裏話をしたいと思います。

何番のクラブを振るのか、最終的に決めるのは選手だけれど…

撮影/ALBA Net ブリヂストンオープン

トーナメントを観戦していると、選手とキャディが何番を持つか話し合っている光景を見かけます。スコアに大きく関わる番手選びですが、選手がそれについてキャディに求めているものは、その選手によって全く違います。キャディ側も番手の選び方や選手への薦め方は人それぞれ。「8番で良い?」という確認を毎回する選手もいれば、明らかに間違った番手を持った時だけ指摘してほしいという選手もいます。「これで」と言ってクラブを渡すキャディもいますし、コースの情報提供以外は選手にお任せというキャディもいます。

コースレイアウト、ピンポジションといった不変のものから、風、流れ、緊張感といった目に見えないものまで、全てを考慮しなければならない番手選び。選手にとってもキャディにとっても、常に不安が付きまとう悩みの種でもあります。

それでも、最終的にそれを振るのは選手。その時に、一番自信を持って振ることができる番手を選ぶために出来ることは何か。それが人によっては、「自分で決める」ことだったり、「キャディに背中を押してもらう」ことだったりするわけです。

テレビ中継にまつわる「番手」のお話

テレビを通じてトーナメントを観戦していると、その時プレーに入ろうとしている選手の持っているクラブの番手が表示されていることがあります。それによって分かることは、その選手の飛距離だけではありません。その選手が攻めようとしているのか、固く行こうとしているのか、見ている側にとってもそれは楽しむための重要なファクターです。

では、その番手はどのように確認されているのでしょうか。皆さん、ご存知ですか?

優勝争いをしている場合、その組、もしくはその選手に必要に応じて「番手チェック」と呼ばれるスタッフが付きます。スタート前に挨拶に来るそのスタッフは、選手が何番のクラブで打ったかを、情報として送信するのが仕事です。

しかし、プレー中の選手の周りをうろうろするわけにはいかないので、キャディに聞くことが多くなります。優勝争いをしていなくても、ショートホールなどに番手チェックのスタッフがいれば、そこで使う番手を伝えることになり、キャディがそれを求められる場面は少なくありません。

番手を伝える際、選手がショットを打つために集中している場合、口頭で伝えるわけにはいきません。その時に使うのがハンドサインです。8番アイアンなら3本の指を出して下向きに、4番アイアンなら4本の指を上向きにします。

ハンドサインはこんな感じ!

ゴルフを知らないスタッフが番手チェックをしていることもあり、2番と7番、3番と8番、4番と9番それぞれの番手を間違わないように伝えるための工夫です。(ただこの方法は、ロングアイアンを使わなくなった今では、もうあまり必要なくなってきています)

サンドウェッジと伝えたくて「S」と空間に描いてみたり、56度と伝えたくて「ごじゅうろく」と声は出さずにパクパクと口の動きと指の本数で伝えてみたり。クラブの番手がメーカーによって煩雑化するにつれ、伝え方が非常に難しくなってきたのが、キャディにとっては悩みどころです。スタート前に担当のスタッフとする打ち合わせが、ますます重要になっています。

テレビに映らないところで、そんなやりとりが行われているということを、ぜひ知っていただいて、キャディの動きにも注目を。もっとトーナメント中継を楽しめると思います。

◆おだみなプロフィール

おだみな/元プロキャディ。男子、女子両ツアーで活動し、宮里藍プロのデビュー年からアメリカ本格参戦までの専属キャディとして転戦。現在は二児の母をしながら、近所のゴルフ場でハウスキャディとしてアルバイト中。学生時代に家族の影響でゴルフを始め、ゴルフ歴だけは長いがスコアはイマイチ。