プロゴルフツアーを観るなら知っておきたい!『カットライン』って何?プロキャディが教えます!

トーナメントの予選2日目(4日間競技の場合は金曜日、3日間競技の場合は土曜日)。予選を終えたプロゴルファーたちがその日もっとも気になるのは、『カットライン』のスコアがいくつになるのかということです。

そもそも、カットラインってなに?

プロゴルファーの大会には、予選と決勝があることがほとんど。その通過人数は、女子の場合は『出場選手数を半分にして、一桁目を切り捨てた数(アマチュアを含む)』。男子の場合は、『アマチュアを除く60位タイまで』となっています。(※女子の場合、出場人数が108人の場合は、50位タイまで。132人の場合は60位タイまで。144人の場合は70位タイまで。また、雨天などでサスペンデッド(一時中止)などあった場合は、変更されることもあります。)

例えば、60位タイまでで予選カットの場合、予選最終日にトータルのスコアが+1で71位タイ、±0で52位タイだとしたら、±0までの70名が予選通過ということになります。この場合、±0がカットラインということになります。

プロがカットラインを予想するのは意外な理由!

出場したからには決勝に駒を進めたいというのは、全ての選手に共通する想い。しかも、予選を通過できなければ賞金を獲得できず、移動費や滞在費の分、マイナスになってしまいます。そのため、予選最終日となる2日目は、多くの選手がカットラインを予想してからコースに出て行きます。

カットラインの予想としてよく言われるのは「x(初日のカットライン上のスコア)×2-1」です。そこに、天候などを加味して、予想を立てます。それによって、攻めるのか、守るのかを天秤にかけながらゴルフしていくことになります。

カットラインの予想をする理由は、プレーに関わった話ばかりではありません。現実的な話、最も大きく関わってくるのは宿泊先をチェックアウトするかどうかということ。たくさんの荷物を抱えての移動の日々、宿泊先をチェックアウトするかどうかは、その荷物をどうするかという問題でもあります。

予選の初日を終えて、予選落ちもありうるというスコアの場合、2日目の朝にその日の予約はそのままにしておいて、一度チェックアウトする選手がほとんどです。結果が決まり次第、宿泊先に連絡を入れる形をとります。予選通過の可能性が高いスコアでも、「落ち着いてプレーできないから」という理由で必ず朝にチェックアウトするという選手もいました。

想定外のカットラインになってしまったことも

カットラインギリギリでラウンドを終えた選手は、宿泊先に戻れないので、ゴルフ場で結果を待つこともよくあります。午前のスタートだったせいでなかなか結果が出ない…という場合には、一度宿泊先に戻る人もいますが、落ちた場合などゴルフ場の荷物を片づけたりもしなければならないので、練習などしてコースで待つ姿を目にすることができます。スコアの速報が表示されているパソコンの前では、自分の順位を確認している選手や関係者の姿を見ることができます。

ときに、大きくカットラインが動いてしまうこともあります。その多くが、天候の急変によってもたらされるものです。
午前組がラウンドを終える頃に、やっとスタートする午後組。午前組で芳しくない結果でラウンドを終えた選手は、午後組がスタートしていく頃には帰りの支度を終え、順次帰って行きます。ところが、突然の強風などで予想していたカットラインよりも想像以上に悪いスコアがカットラインとなった時、既に自宅の近くまで帰ってしまっていたという選手もいます。北海道から福岡へ帰ってしまった選手もいました。福岡空港に着いて関係者からの電話で予選通過したことを知り、迎えに来ていた奥様にお土産だけ渡してそのまま再び羽田経由で北海道へと向かったそうです。

カットラインが決まるまでの時間

予選2日目がサスペンデッドになってしまった場合、カットラインがはっきり決まらないまま次の日に持ち越しとなってしまうので、予選通過の可能性がある選手はコース周辺に留まらざるをえません。帰るに帰れないという状況です。1泊して結果を待ったのに、残念ながら予選落ちというのもよくあること。確実に予選通過というスコアであがれなかった自分を恨むしかありません。

最終組が最終ホールに近づいてくれば、徐々にカットラインが見えてきます。しかし時には、最後の一人までわからないという状況も生まれます。カットライン上にいる選手が、最終ホールでバーディーを取ると、カットライン上にいた選手は皆予選落ち。逆に、誰かがスコアを落としてカットラインが1打下がり、お陰で滑り込み予選通過を果たした選手から感謝されて苦笑するといったことも。

予選2日目の午後、速報の前ではカットラインに喜び、カットラインに肩を落とす。———そんな風景を見ることができます。華やかな決勝の裏で、そこに立つまでのドラマがあるのです。

◆おだみなプロフィール

おだみな/元プロキャディ。男子、女子両ツアーで活動し、宮里藍プロのデビュー年からアメリカ本格参戦までの専属キャディとして転戦。現在は二児の母をしながら、近所のゴルフ場でハウスキャディとしてアルバイト中。学生時代に家族の影響でゴルフを始め、ゴルフ歴だけは長いがスコアはイマイチ。

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