ショットが安定しないと、ついスイングばかりを直したくなります。しかしキム・ハヌルさんが女性ゴルファーにすすめるのは、1日100回のスクワット!
プロが球を打つ以外にも多くのトレーニングを重ねる理由と、緊張やミスに負けず18ホールを戦うための“心の練習”を教えてもらいました。

◆スイングより先に土台を整えよ!“1日100回”でアドレスが激変
「女性ゴルファーへワンポイントアドバイスを」とお願いすると、ハヌルさんの答えはスイングの形でもクラブ選びでもありませんでした。
「スクワットを1日100回ずつやってみてください」
一般のゴルファーは、上達しようと思うと練習場で球を打つ回数を増やしがちです。一方、プロはパーソナルトレーニング、ピラティス、ランニングにも多くの時間を使います。技術を発揮するためには、まず体ができていなければならないからです。
ゴルフで特に重要なのが、下半身と体幹。スクワットはその両方へ働きかけ、アドレスの安定につながります。構えたときに重心が浮くような感覚がしたり、なぜかしっくりこなかったりする日は、下半身で地面を捉えられていない可能性があります。
「お尻と中臀筋にクッと力が入ると、重心が下へ落ちて、すごく安定します。スクワットをすると、アドレスしたときの感覚が違いますよ」

100回と聞くと多く感じますが、一度に行う必要はありません。テレビを見ながら20回を5セット、あるいは歯を磨きながら10回ずつ。ハヌルさん自身は、髪をドライヤーで乾かしながら一度に100回行うこともあります。
最初はきつくても、10回を10セットに分ければ始めやすくなります。慣れたら20回、30回と1セットの回数を増やし、100回が苦にならなくなれば1日110回、120回へ。
大切なのは、一度だけ頑張ることではなく、生活の中へ組み込むことです。
「100回もするのは大変と思うかもしれません。でも合間に少しずつこなして、それが1年続けば、ものすごい力になります。些細な習慣が集まって、大きな力になると思うんです」
ハヌルさんが20年以上続けるピラティスも、同じ考え方です。左右非対称になりやすいゴルファーの体を整え、自然に美しい姿勢を保てる土台を作ってきました。目に見える即効性より、毎日の小さな反復。それが再現性の高いスイングを支えます。
◆メンタルも練習で整える! 18ホールを戦うための心のルーティン
体と同じように、心も練習によって整えられるとハヌルさんは言います。現役時代は、試合前に強い緊張を感じる選手でした。会場にはスタートの約2時間前に入り、トレーナーとウォーミングアップ。ティーオフの約1時間10分前からショットを満遍なく確認し、最後にパッティングをしてスタートへ向かう。この決まった流れが、心と体を試合モードへ切り替えるスイッチでした。
1番ホールのティーイングエリアでは、打つ前にその場で軽く何度かジャンプ。緊張すると上がりやすい肩をほぐし、体から余分な力を抜くためです。キャディーとは「昨日、何を食べた?」「今日、終わったら何を食べようか」といったゴルフ以外の話をしました。
「ゴルフのことを考えると、余計に緊張するんです。日常の話をしていると自然に笑顔も出て、緊張がほぐれました」
“スマイルクイーン”という愛称は、時に「笑わなければ」というプレッシャーにもなりました。それでも無理に表情だけを作るのではなく、他愛のない会話で気持ちをゴルフから一度離す。結果として生まれる自然な笑顔が、いつものプレーを取り戻す助けになりました。

ミスが続いたときも、意識するのは区切りだといいます。
「このホールは終わり。次のホールはまた新しいホールだ、と考えるようにしていました」
前のホールはもう終わった。ティーショットをラフへ入れても、そこからパーを拾うチャンスは残っています。起きたことではなく、次にできることへ意識を移します。
「マインドコントロールもすべて練習です。最初から上手にできる人はいません」
気持ちの切り替えも、スクワットと同じです。意識して何度も繰り返すうちに、少しずつ自分のものになります。性格をまったく別のものに変えることは難しくても、感情を抑え、次の一打へ向かう方法は身につけられるのです。
◆一度に変えようとせず、小さな習慣を少しずつ積み重ねよう!
安定したゴルフを支えるのは、特別な秘技ではありません。
毎日のスクワット、試合前の決まった準備、ミスを区切る考え方。
ハヌルさんが教えてくれたのは、体も心も反復によって強くなるということ。まずは今日10回のスクワットから。無理なく続けられる一歩が、やがてアドレスと一打への自信を変えていきます。
キム・ハヌル/韓国女子ツアーで2年連続賞金女王に輝き、日本ツアーでも通算6勝を挙げたトッププレーヤー。2016年の「LPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」、2017年の「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」を制するなど、日本でも高い人気と実績を誇る。ツアー引退後は韓国メディアを中心に活動の場を広げている。“スマイルクイーン”の愛称で親しまれ、華やかなプレースタイルと親しみやすい人柄で多くのファンを魅了し続けている。
撮影/三浦伸一 取材・文/金明昱 取材協力/取手桜が丘カントリークラブ【アコーディア・ゴルフ】








