古閑美保コラム 「パーシモンと糸巻きなら若い子にも負けない」

こんにちは、古閑美保です。街の木々は赤みを帯びて、もうめっきり秋ですね。ツアーを転戦している頃は、ゴルフ場で四季を感じていたものです。紅葉の時期になると、賞金女王争い、そして、翌年の出場権をかけたシード権争いが話題になります。今年はシード選手の入れ替わりが多く、そのあたりに注目しました。

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ツアー全体のレベルが上がり、シード選手の入れ替わりが激しくなった

国内女子ツアーは、コロナ禍で2020年と21年を統合した長丁場。ちょうど先週の「大王製紙エリエールレディスオープン」で、来季の出場権をかけたシード権争いが決着しました。

大王製紙エリエールレディスオープンを制した原 英莉花プロ

シードとは賞金ランキング上位50名がもらえる、いわゆる賞金シード。そして、今季は、メルセデス・ランキング上位50名にも付与されました。その他、公式戦優勝などの複数年シードがあります。優勝の複数年シードの人数は少ないので、50名の狭き門の争いは毎年熾烈です。ちなみに、私は、2003年に初優勝した年からシード権を落としたことはありません。引退した最後の年も、賞金ランキング47位に入っていました。

シード権争いの中で、一番驚いたのはシード選手の入れ替わりの多さです。初シードは13人、シード復帰が7人、そして優勝の複数年シードのキム・ハヌルを含めて、シード喪失者は18人でした。私が現役の頃は、10人前後が入れ替わる感覚だったので、顔ブレがガラッと変わりますよね。前シーズンに優勝したり、目立った活躍をした選手が、急に成績が出なくなることが多い気がします。スイングだったり何かを変えようとしているのか、私には分かりませんが、一ついえることはツアー全体のレベルが上がったことが要因だと思います。

道具の進化により、ミスヒットをしても真っすぐ打てたり、飛距離もちゃんと出る時代です。ミスが少なくなるので、好スコアも出しやすくなります。優勝スコアとか予選カットラインとか、そういう意味でツアー全体のレベルが上がっています。ですから、ちょっと調子が悪かったり、パッティングが入らないと予選落ちしたり、上位進出しにくくなっているのだと思います。

「うまい」と思える選手は昔より少なくなっている

最近は道具の進化の恩恵を受けたこともあり、「若い選手が増えた」、「世代交代」という方がいますよね。しかし、若い選手は急に出てきたわけではありません。私が24、5歳の頃、(宮里)藍ちゃんがデビューした2004年くらいから、若い選手が多く出てきています。今もそうですが、「あの子ができるなら、私もできる」という考えですよね。藍ちゃんのあと、(横峯)さくらが出てきて、さらにその1学年下の(上田)桃子や(諸見里)しのぶとか、同世代の選手が増えました。

本当に若くなったっていうのは、10年ぐらい前からです。シード選手の平均年齢を見ると、2003年は32・5歳でしたが、06年に初めて30歳を下回る29・5歳になり、2008年には27・6歳歳に下がりました。それ以降は27歳前後を推移していて、今季の26・3歳が最年少です。ちなみに、来季のシード選手は27・5歳だそうです。

ただ、ツアー全体のレベルは上がっていますが、個人としての技術力は、ひと昔前の選手の方がありました。技術の高い選手は、優勝しなくてもいつも優勝争いに顔を出します。上位10人ぐらいは本当に「うまいな~」って感じでした。しかし、最近は、そう思える選手は5人ぐらいに減っていると感じます。

私は、2003年に21歳でツアー初優勝を遂げて、賞金ランキング3位に入りました。05年は優勝できませんでしたが、ランキングは15位です。それ以外は、毎年トップ10以内に入っていました。技術があれば、シード権を落とすこともないと思うんです。私は清元(登子)先生に、「20勝して一流。30勝して超一流」といわれていました。私は12勝止まりだったので、二流です。女子プロでの話しですが、10勝しても二流っていう価値観でプロをやっていました。1勝、2勝したぐらいでは何にも認めてもらえませんでしたから。やっぱりやり方を含めて練習は大事なことです。技術が必要とされるパーシモンのドライバーと糸巻きボールで対決したら、今の若い子にも負けないと自負しています。

ツアーに出るための入れ替えが激しくなり、いろいろな選手にチャンスが増えていると思います。そう考えられる選手はワクワクできるでしょうし、“油断できない”と感じる選手はドキドキしちゃいますよね。新しい選手がどんどん出てくるのは素晴らしいことですが、6年連続賞金女王に君臨した不動(裕理)さんのように、絶対的な横綱がいるのも、また面白い戦いになると思います。数年にわたって上位陣のがんばりも期待したいですね。

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こが・みほ/1982年7月30日生まれ、熊本県出身。身長167センチ、2001年プロ転向。03年にヨネックスレディスでツアー初優勝を遂げるなど、年間2勝を挙げて賞金ランキング3位。08年には年間4勝を挙げて、賞金女王戴冠。29歳になった11年、シード権保持していたがツアー引退。ツアー通算12勝。21年からGMOインターネットグループのアンバサダーに就任

取材・文/小高拓

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