風、グリーン、ピンポジ…荒天の試合に見る【プロゴルファーを苦しめるいくつかの要因】

ゴールデンウィーク真っ只中、茨城ゴルフ倶楽部西コースで開催された「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」。最終日の天気予報は、雨。昼から風も加わる予報だったためか、第1組目のスタート時間が6時半という、最終日としては異例な早い時間からのスタートとなりました。

その甲斐もあってか、競技は中断になることもなく無事に終了! 初日から首位に立った吉田優利プロが逃げ切って優勝という形で幕を閉じました。

優勝スコアは1オーバー、予選のカットラインは9オーバー。80台を打つ選手が続出し、現場ではスコアを示すキャリングボードの数字が足りない! なんていう珍事が起きるほど。オーバーパーでの優勝は、公式戦ではそれほど珍しいことではありませんが、プレーしているプロは同じなのにこれほどスコアが違うのはなぜなのか? 今大会の状況と合わせながら、説明していきたいと思います。

ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ で優勝を遂げた吉田優利プロ

◆ スコアに影響する3つの原因

アマプロ問わず、スコアが悪くなる原因は大きく3つ。コースレイアウト、コースの状態、そして天候です。

・コースレイアウト

距離が長い。ドッグレッグしていて、打っていける場所が限られる。コースが狭い。グリーンが少し高くなっている「砲台」と呼ばれるグリーンが多い……など、元々のそのコースが持つ難しさがあります。

今回の開催コースである茨城ゴルフ倶楽部の場合、昔ながらの2グリーン(1ホールにメイングリーンとサブグリーンの2つのグリーンがあること)のため、グリーンそのものが他のゴルフ場に比べて小さく、砲台グリーンが多いのが特徴です。小さくて砲台なグリーンは、手前から転がして載せるということが難しく、ピン近くに止めるには高い球と、それに合ったスピン量、そして球が止まりやすい位置に落とすという正確性が必要になります。

・コースの状態

全てのプロの大会では、開催に合わせてコースセッティングを難しくしています。ラフを深くする。フェアウェイの幅が狭める。グリーンを固くする。または、速くする。そして、最終的にはピンポジションを難しい場所にすることで、想定スコアになるように調整しています。

今大会では、グリーンの固さと速さはもちろんのこと、ピンポジションもかなり難しい場所に切られていました。アプローチをする際にも、念入りにグリーンを確認しているプロが多く、いつも以上に時間がかかっていた印象です。
ラフの深さも、女子プロにとってはスコアに直結しがち。とくに今回のグリーンは転がして載せることが難しいので、ラフから打った球がグリーンで止まらずに奥に零れてしまうという状況をあちらこちらで見かけました。

・天候

プロにとって難しいのは、雨よりも風。風の強さや向きは一定ではなく、変化するのが常です。どれぐらい影響するのか、コースのレイアウトや周りの状況を確認しながら風を読みますが、それでも必ずしも思った通りに飛んでくれるものではありません。

今大会では、2日目の後半から時に2番手では足らないほどの強風が吹き、小さいグリーン、そしてその固さと相まってグリーン上にボールを止めることが非常に困難な状況に。最終日になって雨が降り始めると、グリーンが柔らかくなってスピンで戻るような状況も見られましたが、傘がひっくり返ってしまうような強い風に、グリーン上のボールが動いてしまうこともありました。

雨よりも風が難しいとは言いますが、雨が全然問題ないということはありません。動きにくいレインウェア、フェース面やボールが濡れることで球が滑るという現象も起きます。帽子から垂れるしずくも、集中の妨げに。
最終日は、雨による想定外の気温の低さもプロを苦しめました。3日目までが夏日と言われるほど暑かったため、寒さ対策が万全でなく、対応できなかった選手も多くいたようです。

◆ 難しい状況でのプレーは、自分自身との闘い

プレーヤーを苦しめる要因が全て揃ってしまったような今大会のように、「我慢大会」と言えるような状況の中では、集中を切らさないことはすごく難しいものです。何をやっても上手くいかないような、我慢を強いられるような状況は、自分自身との闘いでもあります。イライラしないように、がっかりしないように、自分をコントロールすることが大切なので、無理に集中しようとせず、どう楽しむかを考えるプロや、どう楽しませるかを考えるキャディも少なくありません。

「プロの大会なのだから、もっとバーディーをとる姿が見たい!」という意見もあると思いますが、プロでも苦しむ状況をイメージして、そんな中でプロがどんな様子でプレーしているのか、その気持ちの部分を想像しながら観戦すれば、普段とはまた違った楽しみ方がありますね。

◆おだみなプロフィール

おだみな/元プロキャディ。男子、女子両ツアーで活動し、宮里藍プロのデビュー年からアメリカ本格参戦までの専属キャディとして転戦。現在は二児の母をしながら、近所のゴルフ場でハウスキャディとしてアルバイト中。学生時代に家族の影響でゴルフを始め、ゴルフ歴だけは長いがスコアはイマイチ。

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