ゴルフの「アマチュア資格」って? プロとの違いや賞金の上限額について教えます!

史上初、ジュニアゴルフ世界4大メジャーのグランドスラムを達成した須藤弥勒選手。彼女は13歳になる今年、いよいよプロの大会への出場が可能になります。それに合わせて、昨年末に自動車販売などを行う太陽自動車と長期の所属契約を締結しました。アマチュアでありながら12社・団体と契約を結び、その推定額は3億6000万円と言われています。

そもそもアマチュアって、お金を貰って良いの? と疑問に思う方もいるでしょう。女性ゴルファーに、「アマチュア資格規則(賞品や賞金の受取額の規定等)について理解していますか?」と尋ねたところ、「理解している」が12.8%に対して、「なんとなくわかるが自信がない」が35.9%、「知らない」が51.3%という結果でした。(2023年12月調査、N=77)。
プロの大会でアマチュア選手が優勝してもその賞金をもらうことができない――ということはよく知られていても、それ以外のことがあまり知られていない「アマチュア資格規則」。2022年1月に変更された内容と合わせて、改めて解説していきます。

◆「アマチュア」の定義は? 「アマチュア」と「ノンアマチュア」の違い

アマチュアゴルファーとは、ゴルフをプレーすることに関連して賞金やその他の営利を目的とせず、純粋にスポーツとして楽しむことを目的にゴルフを行う人を指します。とはいえ、「競技に出場するゴルファー」と「プライベートで楽しむだけのゴルファー」の2種類がありますね。日本ゴルフ協会(JGA)の新しい規則では、それらを分けて理解するため、前者を「アマチュア」、後者を「ノンアマチュア」と定義しています。

したがって、ゴルファーはプロ、アマチュア、ノンアマチュアの3つのカテゴリーに分類され、アマチュア資格規則でその資格について定められているのは、「競技に出場するアマチュア」に対してのみ。つまり、競技に出る意思の無いノンアマチュアであれば、禁止事項に定められている「10万円以上の賞金や賞品」をコンペなどで受け取っても問題ありませんし、極端な話では100万円もらっても問題が無いということになります。逆に、アマチュア資格規則に違反する行為さえしなければ、全てのゴルファーがアマチュア資格を持っているとも言えます。

◆アマチュア資格規則で定められている賞金、賞品、スポンサーの規定

2022年1月に、アマチュア資格規則が改訂されました。大きな変更点は、2つ。まず、規定内の賞金を受け取ることが可能になったこと。そして、広告出演や大会諸経費などの支援を受ける制限が撤廃され、アマチュアでもスポンサー収入を得ることができるようになったことです。

改訂前までアマチュアが受けられる支援は、モニターとしてメーカーから物品を提供されるぐらいで、金銭による支援には大きな制限がありました。ところが、この制限が撤廃されたため、須藤弥勒選手のように多額のスポンサー料をもらうことも可能に。氏名、肖像を宣伝・広告に利用することもできるので、CM に出演して報酬をもらうこともできます。企業のコマーシャ ルロゴを付けた衣類を着てプレーすることも可能です。(競技の主催者がドレスコー ドを規定している場合は、その規定に従う必要があります。)

しかし、この改訂によっていくつかの事項が緩和されたとはいえ、変わらない禁止事項も。アマチュアゴルファーとして競技に参加するためにはアマチュア資格を保持していることが必要で、違反すると資格が剥奪され、競技に参加することができなくなるので注意が必要です。

アマチュア資格規則で定められている禁止事項は?

1.規定額(1000ドル、もしくは700ポンド)を超えた賞、賞金を受け取ること

・賞金限度額が適用されるのは、ゴルフコースまたはシミュレーターで行われるティからグリーンをプレーする大会のみ。ロングドライビングやパッティングコンテストなど、一部の技術大会は対象外となります。

・ハンディキャップを用いる競技と用いない競技(スクラッチ競技)では、規定が異なります。スクラッチ競技では賞金、賞品共に10万円以下であれば受け取ることができますが、ハンディキャップ競技で賞金は受け取れません。(賞品であれば、10万円以下のものまで受け取ることができます。)

女性向けコンペなどでよく見かける「ベストドレッサー賞」といったゴルフの成績には関係ない賞や、記念品やお土産、抽選などで当てた賞品について、この規則は適用されません。

2.プロゴルファーとしてプレーすること

・ティからホールへの競技以外のゴルフ技術を競う競技(ロングドライビングやパッティングコンテストなど)ならば、プロフェッショナルとしてプレーをしても問題ありません。

3.レッスンをすることで報酬を得る

・レッスン動画や書籍を出版するなど、一方的に発信されるものについては禁止されていません。

4.ゴルフクラブプロとして職を得ること

・ゴルフ場、または練習場のプロフェッショナルとして雇用されることは禁止です。(自営業を含む)

5.プロゴルファーのための協会の会員となること

・プロテストやQTを受験しただけでは、違反にはなりません。

禁止事項を破ったからといって、その瞬間にアマチュア資格を失うわけではありません。JGAが違反についての調査などを行った上で初めて裁定が下されますが、ルールの解釈が難しかったり、本人が関与しないところで規則違反に抵触する話が進んでいたりなど、情状酌量により資格を喪失しないケースもあるそうです。

◆アマチュア資格を失ってしまったら

アマチュア資格規則に抵触してしまうと資格が喪失し、アマチュアとして競技ゴルフに参加することができなくなってしまいます。アマチュアに再び復帰するためには、JGAにアマチュア資格の復帰申請をして、その承認を得なければなりません。
規則変更前は、申請の手続きをしてから原則的に復帰するまで1年を要しましたが、変更後は6カ月で可能になりました。しかし、規則に規定されている期間が経過しても、復帰申請の手続きをしないとアマチュアには戻れません。

エンジョイゴルファーにとっては、あまり身近で無いアマチュア資格規則。これから競技ゴルファーを目指したい! という方はもちろん、競技ゴルファーが参加する可能性があるような大きなコンペの幹事を任されているという方にとっても、知っておいて損はありませんね。

◆おだみなプロフィール

おだみな/元プロキャディ。男子、女子両ツアーで活動し、宮里藍プロのデビュー年からアメリカ本格参戦までの専属キャディとして転戦。現在は二児の母をしながら、近所のゴルフ場でハウスキャディとしてアルバイト中。学生時代に家族の影響でゴルフを始め、ゴルフ歴だけは長いがスコアはイマイチ。

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